解説テキスト
複数業務要因災害とは
複数業務要因災害とは、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする傷病等をいいます(第7条第1項、福井労働局「労災認定の考え方」)。たとえば、2つの勤務先で長時間労働が重なり、脳・心臓疾患や精神障害が発症した場合などが問題になります。
複数事業労働者の意味
同じ時点で、事業主が同一でない複数の事業場に使用されている労働者です。転職で前職と現職が入れ替わっただけの人は含まれません。
1つの事業だけで足りれば通常の業務災害
複数就業者でも、1つの事業場の業務負荷だけで業務上と認められるときは、通常どおりその事業場の業務災害として扱われます。複数業務要因災害は『複数の事業の負荷を総合してはじめて労災認定される』場合に使う考え方です。
何でも複数業務要因災害になるわけではない
複数の職場で働いているという事実だけでは足りません。傷病等が『複数の事業の業務を要因として』生じたことが必要です。
業務災害と通勤災害の違い
業務災害は使用者の災害補償責任と結びついていますが、通勤災害は社会的危険に対する保護なので、使用者に労基法上の災害補償責任は生じません。この違いは、休業の最初の3日間の扱いなどに現れます。業務災害では事業主に労基法上の休業補償義務がありますが、通勤災害ではありません。
| 比較項目 | 業務災害 | 通勤災害 |
|---|---|---|
| 名称 | 補償がつく | 補償がつかない |
| 労基法上の災害補償責任 | あり | なし |
| 待期3日間の事業主補償 | あり | なし |
| 一部負担金 | なし | あり(療養給付で問題になる) |
勉強のコツは『なぜ違うか』で覚える
業務災害は『仕事そのものが原因』、通勤災害は『働くための移動に伴う社会的危険』という違いを理解すると、名称や事業主責任の差を丸暗記しなくても整理できます。制度趣旨を押さえると、似た選択肢でも迷いにくくなります。
章のつながり
次章以降の療養・休業・障害・遺族でも、業務災害か通勤災害かで名称差が出ます。まずこの章で『なぜ差があるのか』を押さえると後が楽になります。