解説テキスト
労災保険は『保険給付だけ』では終わらない
労災保険は、療養や休業などの保険給付だけで完結する制度ではありません。被災労働者の社会復帰を支えるために、社会復帰促進等事業が置かれています(第1条、第29条)。事故後に治療費を出して終わりではなく、その後の生活再建や職業復帰まで見据えるのが制度の特徴です。
第1条と第29条のつながり
第1条は制度の目的、第29条はそれを具体化する事業規定です。条文を縦につなげると理解しやすくなります。
保険給付との違い
保険給付は、法律で定められた支給事由に当てはまれば権利として請求できる仕組みです。一方、社会復帰促進等事業は、被災労働者の社会復帰や福祉を図るために行政が行う支援策で、アフターケアや義肢等補装具の支給などが代表例です。『お金を払う給付』だけを想像すると見落としやすい部分です。
| 項目 | 保険給付 | 社会復帰促進等事業 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 労災法上の保険給付 | 社会復帰支援の事業 |
| 代表例 | 療養・休業・障害・遺族 | アフターケア、義肢等補装具費支給など |
| 学習のコツ | 支給要件と額を押さえる | 制度の目的と代表例を押さえる |
代表例をざっくり把握する
厚生労働省の案内では、社会復帰促進等事業として、アフターケア、義肢・装具などの補装具費支給、被災労働者の社会復帰のための援護事業などが紹介されています。試験対策では、まず『第29条 = 保険給付以外の社会復帰支援』と大づかみに押さえ、その具体例を紐づけるのが効率的です。
名称のひっかけ
社会復帰促進等事業は『保険給付の8種類』には入りません。第12条の8第1項の保険給付と、第29条の事業を混同しないことが大切です。
被災後の長い支援をイメージする
例えば、けがが治って療養給付が終わった後でも、後遺障害に伴う装具の調整や定期的な経過観察が必要なことがあります。そうした『治療の外側』を支えるのが社会復帰促進等事業の役割です。だからこそ、第29条は本試験でも制度趣旨を問う形で出題されやすいのです。